新米サンタとお金持ちシェリル

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 西の空には夕焼けに染まり、雪で覆われた銀世界を幻想的に照らします。  ここは世界のどこかにあるサンタズ・ブートキャンプ。  世界中の子ども達にプレゼントを配るサンタ達が、日夜訓練に励む場所です。  今日はクリスマス・イヴ。サンタ達はいそいそとソリの準備をしています。  その中で1人だけ、準備にもたついている若い男性がいます。新米サンタです。 「緊張してるわね」  そう言ったのは赤い鼻をしたトナカイ。サンタクロースはトナカイと会話する事が出来るのです。 「すみませんルドルフさん。緊張と寒いのとで手が上手く動かなくて……」 「まあ、最初はそんなもんよ」  ルドルフと呼ばれたトナカイはほうっ、と白い息を吐きました。  ルドルフとは世界で1番有名な赤鼻のトナカイの名前です。現在では優れたトナカイに送られる、いわば称号となっています。  新米サンタとペアを組むトナカイの本名はエリザベート212号というのですが、彼女は誉れ高き「ルドルフ」という名前で呼ばれることを好み、新米サンタも尊敬の念を込めてルドルフと呼ぶことにしています。 「なんにせよ、早く準備しなさいな。プレゼント配りは速さが大事だからね」  そう言われても寒いのはどうしようもありません。新米サンタはかじかんだ手で手綱をつけていきます。
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