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彼女は他の誰よりも早く学校に来ている。そのことを若月は知っていた。
先日、彼女に次いで二番目に学校にやってくるという高松に教えてもらったのだ。代償としてランチ一食分を奢らされる羽目になったが、そんなことはどうでもいい。人生がかかっているのだ。なりふり構ってなどいられない。
高松の情報を受け、学校で二人きりになれるチャンスはここしかないと山を張り、ケータイのアラームやら目覚ましやらをセットして、なんとかこの時間に学校に来られるようにしておいた。
再び背後のドアに体を向ける。この向こうに彼女がいると想像するだけで、足が震える。くじけそうになる。鎮まりかけていた鼓動が再び加速を始める。
何のために早起きしたのだ、とどこからか声がした。いや、もしかしたら、心から発せられたものなのかもしれない。何のために高松から情報を仕入れたのだ、と訴えかけてくる。
その通りだ、と思う。僕は彼女に会いに来たのだ。臆病風になんか吹かれてたまるか。
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