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同じ頃、山あいの村エルニテに、珍しくニュースが飛び込んできた。
『近隣にて局所魔力異常発生!繰り返します。近隣にて局所魔力異常発生!』
口の部分がメガホンの形になった、人の頭の大きさ程の鳥、『拡声鳥(かくせいちょう)』が忙しなく村の上空を飛び回る。その声を聞く村人達は、明らかに浮き足立っていた。
「いや、まさかこんな田舎で起きるとは思わなかったなぁ」
「俺も出先で遭遇するなんて思ってなかったですよ」
村の一角にある市場で、薄めの灰色をした無造作な髪に紺碧の瞳をした少年、アッシュ・ウイングベルが食料を買い込んでいた。この村にはあまり来ない旅人ということもあってか、四十代程の店主は気前よく「日持ちするから」と乾燥果物をおまけとして付けてくれた。
『局所魔力異常により、人間界のモノが流れ着いた可能性アリ。なるべく触れずに、速やかにお近くのシーダ王国魔法管理局支部まで御連絡ください』
キンキンと辺りに響く拡声鳥の声に、アッシュは「相変わらずうるせーもんだなぁ」と、店を去ろうとする間際に何気なくこぼした。しかし店主の方はその呟きに反応することもなく、ワントーン下がった低く小さい声で呟く。
「人間が来れば……」
店主はその呟きに気付かれていないと思ったのか、すぐに笑顔を見せてアッシュを見送った。アッシュは店主に背を向けてひらひらと手を振るが、その顔はどこか険しかった。
「やっぱりか」
周りを見れば、村人達は浮き足立っているというより、目に嫌な欲を浮かべている。これは警戒した方が良さそうだ。苦笑いしながらアッシュはそう思った。
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