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進んできた森が開け、光が濃くなった瞬間、七海は救われたと思った。ただ、その希望は一瞬で消え去った。
「ここ、本当にどこなの……!?」
森と丸太製の外壁に囲まれ、中世ヨーロッパを思わせる民家が並んだそこは、どこか閉鎖的な印象を漂わせている。そして、これは明らかに現代の日本のものでは無い。
今、自分は一体どこにいるのだろう?金魚のように口をぱくぱくと動かすだけで、七海はどうしていいか分からなかった。
(けど、ここでずっと立ってる訳にもいかないし)
どうしてか、唸りながら意味もなく足踏みをしてしまう。確かに、このまま何もしなかったら状況は変わらない。だとしたら、今の自分に残された選択肢はあの村に行くことしかないのだろう。もしかしたら、何か状況を打破出来るきっかけになるかもしれない。震える足で、七海は一歩踏み出した。
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