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「……える、に、て?」
しばらくすると村の入口に辿り着いた。その門に掲げてある看板に書かれた文字はアルファベットで、正しいかは分からないがどうにか読むことは出来た。村の名前か、もしくはここの言葉で「ようこそ」なのか……。と、そこまで考えてようやく気付いた。
「言葉、通じるのかな?」
ここまで来たのに、と泣きたくなる。実際、ここがどこの国かすら分かっていない。それすらも頭から抜けてしまうのだから、今の七海は目先の事でいっぱいいっぱいになっているようだ。しかし、今は進むと決めたばかりだ。道端の木陰から出て、村へ歩みを進めた。
入口に門番が居ないのを見て、サッと村の中に駆け込む。外から見たのと同じく、古びた西洋的な街並みが続いていた。
「実物は初めてだなぁ」
レンガや土で出来た家の壁、石畳の道、どこか閑散とした雰囲気のある通り。道を通る人々の、どこか昔を感じさせる質素な服。テレビでしか見たことの無い世界が現実として目の前にあった。怪しまれると頭では分かっていたが、思わず周りをキョロキョロと見てしまう。
「ここから、どうすればいいかな……?」
悠長に町を眺めている場合では無かった。とりあえず村には来てみたものの、どうすればいいかは分からない。村の人に話しかけようにも、そもそも言葉が通じるのか分からない。もう行き詰まってしまった。
「うーん……」
人通りの少ない(元から少ないのだが)路地裏近くの壁に寄りかかり、通る人々を眺める。自分をチラりと横目で見ながらも、関心を示すことなく通り過ぎる人々に寂しさを感じていた。今の自分ではどうにも出来ないこの状況。誰か手を差し伸べてくれる人はいないかと、随分都合のいいことを考えていた。
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