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「そうか。じゃあタッくんの当番のサンタさんは、もう用意してると思うよ。25日の朝、タッくんのお家のドアの前を見てごらん」
「あ、あの……」
母親が何か言いかけたが、僕は、それを遮って告げた。
「こんばんは。同じ階の滝田です。だいじょうぶです。サンタは居ます! サンタクロースは小さい子の夢を壊しません!」
帰省の為の交通費を取ってある。これを充てれば、なんとかなるだろう。
僕は即座に携帯を開き、母へ連絡を入れた。
「あっ、母さん? 今回は、こっちで年を越そうと思うんだ。……えっ? いや、バイトが面白くなっちゃってさ。それに年末年始は待遇もいいんだ。正月明けには帰るから」
携帯を閉じてタッくんを見ると、嬉しそうに母親を見上げている。
「タッくんの分を忘れていないか、僕が、これから確かめに行くからね。安心して。だから、おかあさんの言うことを聞いて、いい子で居るんだよ」
親子連れの顔がパーッと明るくなった。タッくんの母親は涙を浮かべている。
僕は親子連れに手を振ってバス停を離れ、トイザウルスへ向かった。
サンタクロースが居ない訳がないじゃないか。子供達が居る限り……サンタクロースは、いつの世にも必ず存在するんだ。
ー了ー
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