七夕のすすめ

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「雨、降りませんでしたね」 もう既に掛かっている橋を見て使いが言う。 「ああ…」 スンと鼻を啜った。 真新しい着物からは何の匂いもしない。 隣の人から香る匂いも この着物には移ってくれないのだ。 「今年も会えなければいいと思った」 「………」 「そうしたら1日だって離れなくて済むのだから」 てるてる坊主だってそうだ 俺は晴れて欲しくなど全然ないのだ だから、白い頭を逆さにして吊るしたのに 朝も昼も夕も晩も 今日の空はどうしてここまで美しい あまりに傍にいるから、匂いがあいつのもので訝しがられてはならないから着物だって新しい 年に一度、それも晴れた日にしか会えない相手といつでも傍にいてくれる人 触れたいと思ったときに体温を感じられる人 どちらが良いといえるだろう いや、それには語弊があるかもしれない どちらの存在が大きくなるか、と
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