七夕のすすめ

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「…ああ、おかしいところ ありますよ」 俯いていた俺を覗き込んだ相手と目が合う。 「だってこんなにも悲しそうな顔はいつもならならさないでしょう?」 「……っ」 もっと下を向いてしまいたいのにうまくいかない。 きゅっと結んでいた唇に柔らかいものが合わさった。 「……っふ…」 甘いくちづけ 「…ん……」 それだけじゃ足りなくて、舌を差し出した。 だが、それを諫めるように唇を開いてはくれない。 …は 短い吐息を最後に距離をとる 「きっと、我慢できなくなる」 仕事ではない低い声に頭が持っていかれそうになる。 「…っ…っ」 言葉を紡ごうとした唇に今度は指が押し当てられた。 「いってらっしゃい、明日、ここで待っていますよ」 ゆっくりと身体が離れ、橋を渡る。 何度も振り返った その度に相手はやさしく笑う ちょっと悲しそうに眉を下げて。 想って薄く笑った。 ただいまと帰ってきたときに この向こうにいる人よりも 愛しくて仕方がない人のために 最高の笑顔は、明日 明日の予感を告げる満天の星空がきらきらと瞬いていた。 end...
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