第2話 「さらばライバル! ボブよ永遠なれ!」

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「お嬢様! こんな所に!」  新たな男の声に、ボブは「今日はあと何回振り返ればいいんだ?」などとウンザリしつつ、またも振り返った。黒のタキシードに身を包んだ、利発そうな若者の姿があった。 「戸斗中(ととなか)!? あっきれた、こんな所にまで追っ掛けてきて!」 「呆れるのはこちらの方ですよ! 何だって病院を抜け出したりするんですか? わざわざ特別病室まで使っているのに!」  いきなり口論を始める二人を見て、ボブは慌てて少女に尋ねた。 「話が見えないんだが……」 「……私ね、あなたのバスケの試合を昔見てね、あなたみたいになりたいって本気で思ったの。だからずっとバスケを練習してて……」 「お嬢様! ええいそこの男! お嬢様から離れないと、オレの自慢のコマンドが……」  そう言って詰めよろうとする男を、ボブは片手で難なく止め、さらにドリブルをしてみせた。 「申し訳ないが、話の腰を折らないでくれるかな? ミスタータナカ」 「ちがっ! オレはっ! ととなかっ! うっぷ!」  小気味よいリズムで何度もアスファルトに叩きつけられ、戸斗中の口からは、何か青春の煌めきの様な、キラキラとした何かがあふれ出ようとしていた。 「で、小さなプリンセス。聞き間違いでなければ、今しがた『病室』なんて単語が出てきた気がしたのだが……」 「そうよ。私は病気。明日が手術でね……陳腐な話でしょ?」 「そうだな、実に陳腐だ。手術を恐れて病院から抜け出し、スーパースターに出会う……」 「そうね。一つ違った事と言えば、私が会ったのはスーパースターなんかじゃなくって……」  突然少女は、ボブの手から戸斗中を素早く奪い、そのままドリブルしながら駆け出していった。 「過去の栄光にすがり付く、哀れでチンケな大男よ」  ボブは茫然としたまま、彼女の背中を見送る。やがて路地裏には再び静けさと、そして彼女が落としたDVDだけが取り残された。
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