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人類の英知は科学を発展させ、より豊かで幸福な未来を築き上げてきた。かつては難病と呼ばれた病気でさえ、何世代にもかけて克服してきたというのに……。
(「不治の病」……だと?)
民間人が格安で宇宙旅行に行けるようになり、小学生がコンビニ感覚で痔の薬を買えるような時代に、何故あの少女が、よりにもよって大財閥の娘が「不治の病」にかかってしまったのか。
「ジョージ、神はこの世界にいないのか?」
ボブは弱々しい声で、かろうじて口を開く。
「ボブ……もし神様がいるなら、そいつはたった一人で世界を見つめているんだ。彼女一人助けるなんて、それこそフェアじゃない」
「フェアじゃない……そうだフェアじゃない! 大財閥の娘と、かつては世界に輝いたスポーツ選手。この二人の力でも何とかならないのか?」
「ボブ、頼むから落ち着いてくれ……」
「ジョージ! 神は死んだのか!?」
「ボブ!」
ジョージは堪え切れず、懐からクラッカーを取り出すと、ボブの眼全で炸裂させた(彼らはあくまでも鍛えられた人間です。よい子は真似をしないように)。あまりの衝撃に、ボブは言葉を失う。
「いいから聞くんだボブ。確かに神は死んだのかもしれない。しかし、俺たちは生きている。違うか?」
「ジョージ……急に話を逸らすんじゃ……」
反論を試みるボブの口を、ジョージは手に持っていたポップコーンで塞いだ。差し出されたポップコーンを、ボブは反射的に咀嚼する。
「いいから聞くんだ……これはトップシークレットの情報だが、とある製薬会社が、丁度彼女の様な症例の彼女にあう特効薬の開発に成功したらしい。無論、商品化なんてまだまだ先だ」
ボブの目の色が変わる。
「察してくれたみたいだな。だがいいのか? それはおおよそ誉められた行為じゃない。何より、相手が危険過ぎる」
「……おいおいジョージ、忘れたのか?」
ポップコーンを完食したボブは、コーラを口に流し込むと、勢いよく言ってみせた。
「この私が、不可ゲェーップをゲェーップにするゲェーップゲェーップゲェーップ!」
ボブの決意は半ばコーラによって邪魔された。それでも喋りを止めようとしないボブに、ジョージは鉄のような硬い意思を感じた!
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