第2話 「さらばライバル! ボブよ永遠なれ!」

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「見ろ! 最高レベルのセキュリティが!」  警備員の誰かが指差して叫んだ。見れば厳重な装置に付いていたメーターが、音を立ててその上限値に達すると、豪勢なファンファーレと共に、機械に埋めこめられた透明なケースがごとりと落ちた。 「薬が……これで……」 「バカーっ!」  場に似付かわしくない、金切り声が部屋を包む。振り向けば戸斗中が命を投げうってでも助けだそうとした、彩香・キボンヌの姿があった。唖然とする周囲をよそに、彼女は戸斗中に向かって一直線に歩いていく。 「お嬢様……っ!」  戸斗中の言葉は彼女の平手打ちに遮られた。か細い少女の手の平からは、肉体のダメージよりも深い痛みを戸斗中に与える。 「本当にバカね! 何でこんなムチャをするかしら? ライバル会社に単身侵入するとか……命知らずにも程があるわ!」  そういう彼女を見てみると普段着であり、護衛らしき人間も一人もいない。そんな彼女がどうやってここまで辿り着いたのか、戸斗中はまたしても彩香に尊敬の念を抱かずにはいられなかった。 「ですが、俺はお嬢様を……それよりどうして? 何で俺なんかの為にお嬢様自ら……」 「そ……それは……」  顔を赤らめる彩香に、周囲からは口笛や「オーッ」といった祝福の声が飛び交う。その光景にボブは微笑を浮かべた。 (やれやれ、お前は大したナイトだよタナカ)  そして、ボブは誰も気に留めようとしない透明なケースを拾うと、ある事に気付いた。 「……なあ、誰かこのケースの開け方を知らないか?」  ボブの言葉に、周囲は一斉に沈黙した。やがて科学者と思しい老人が前へと出た。 「それは、我がクロート製薬が誇る、象が踏んでも壊れないプラスチック。どんな衝撃でも破る事は出来ない……」 「どんな衝撃でも? ほう、その言葉後悔するなよ?」  ボブはニヤリと笑うと、おもむろにケースを地面に叩きつけ、跳ね返った所をキャッチする。それを繰り返し、どんどん加速していく。 「あれは……」 「そうだお嬢さん。これが私のハイパーテクニック『高速ドリブル』だ!」  そしてケースにヒビが入ると、やがて大きな音と共にケースは割れ、中のカプセルをボブが取ると、彩香に手渡した。 「ありがとう。俺はもう大丈夫。もう一度やれるって事を君に証明してみせよう」 「それじゃ……」 「ああ、引退は止めだ!」
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