はじめに

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 今よりそう遠くない未来。  ムチャクチャ未来ってわけでもなく、今よりほんの少し未来。  強いて言うなら、まだ車が空飛んでないぐらい未来。そしてもちろん、我々現代人の文明や常識がある程度継承された未来。未来(みく)ではなく未来(みらい)。  もうゲロしちゃうとフィクションな未来。  古来より闘争を続けてきた人間は、平和に尽力する様になったものの、その抑えきれない闘争本能を『競技』に置き換え、他者と争う事で種の遺伝子を保ってきた。  種の遺伝子って語呂悪いし、何か日本語として怪しいが、こんな事で一々つまづいている僕らに、未来を切り開く力なんて無いだろう。流せ!  話は逸れたがスポーツ、それも『格闘技』を人々はこよなく愛した。  いきなり人を殴りつけるのは暴力であり犯罪だが、ルールを守った上で振り下ろされる暴力は『技』だ。公に『技』を振るい、世間公認で暴力を振るい続けた者達は『格闘家』と呼ばれ、映画やマンガ、さらにはゲームキャラクターの恰好の題材になり、小学生の「なりたい職業」では『おまわりさん』や『おもちゃやさん』とトップを争う程になっていた。  戦いはスポーツとして、そして人々はそれを傍観する事により、平和な世ではあり得ない『最強』という概念に夢を見ていた。  これは、そんな夢を追った者達の、人生の軌跡である。
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