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涼都はため息をついて、近くの壁に背を預けた。
「最初から、引っかかってたんだよ」
『最初からって……』
『何が?』とでも言いたげな水木に、涼都は小さく笑う。
「下手な小芝居はやめろって。外出許可はそうそう簡単に出るもんじゃない。だけど、まだ俺と東が行くとも決まってないのに、外出届は出来上がってた」
普通なら、行くと決まってから外出届等の複雑な手続きをする。
もし涼都が断ったなら、せっかくの面倒な手続きが無駄になり、また最初からやり直しになるからだ。
だというのに、今回は本人に訊く前から全ての手続きが、外出届の署名さえ勝手に済まされていた。
それは最初から涼都と東に行かせようとして、理事長が手を回したからに他ならない。
つまり、最初から涼都達をみぎわ工房へ行かせるつもりだったのだ。
断るという選択肢は与えられていなかった。
「荻村も『お前らなら何かあっても対処できるだろ』なんて言ってたし。最初から、何か起こる前提で話してたよな」
そこから考えるに荻村もグルだ。
『でもさ、もし故意的に僕が君達をみぎわ工房に行かせたとして、その理由は?』
意図は、涼都も最初わからなかった。
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