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男に言われた場所には小さな小屋が建っており、中に入ると深いシワが刻まれた老婆が暖炉の前で佇んでいた。
「おや、お客とは珍しい。それも若い男の子だなんて」
「急に訪ねてすまない。探し物をしているんだ」
「ハイドラかい?」
老婆は正確に若者探し物を言い当てると、目の前に一杯の紅茶を差し出した。
「この話は少し長くなるね。そこにお座りなさい」
「…………失礼する」
椅子に腰掛けると、老婆は若者の隣の椅子に座る
「ハイドラが知恵を持つ剣、『イレギュラー」だという事は知っているね?知恵、即ち理性があるという事は当然使い手を選別する。坊やは選ばれる自信があるのかい?」
「それは……ハイドラが決める事だ。資格無しと言われたらそれまで、別の剣を探すだけだ」
若者がばっさりと老婆の言葉を切り捨てると、老婆は高笑いをした。
「あっはははははは!愉快な坊やだねぇ。ハイドラ以外のイレギュラーは『レオンハルト』しかないじゃないか」
一頻り笑い続けた老婆は、若者のに一枚の古ぼけた地図を手渡した。
「赤いバツ印にハイドラが眠っているわ。彼、寝起き悪いから斬られないようにしてね」
「問題ない。骨董品に斬られる程腕は悪くはない」
「油断するんじゃあないよ。イレギュラーは錬成されてから何万年と経過している代物だ。坊やみたいな未熟なヤツは飽きるほど喰ってきているんだからねぇ」
「その忠告は、肝に命じておく」
紅茶を飲み終えた若者が席を立って出口のドアに手を掛けたところで、老婆が一つ尋ねた。
「そういえば坊やの名前を聞いていなかったわね。なんて言うのかしら?」
「アレイス・アーリアという。いつか世界を馳せる名だ」
それだけ答えたアレイスは外へと出て行った。
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