星夜に吹く風

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「また負けたー!」  思わず、身体を机の上に項垂れさせてしまう。  そんなみっともない姿を見てか、机の向こう側にいた青年が立ち上がる。 「へへっ、これが現実なんだよ。じゃあな」  彼はそう言いながら机の上にあるカードの束を取ると、腰に着けているデッキケースにしまい、そのまま『店』から出ていってしまう。  ここはカードショップ『グロウム』。TCG(トレーディングカードゲーム)を取り扱っているお店だ。俺はここで、あるカードゲームでバトルをしていたのだ。  遊戯王――それが俺のしていたTCGの名前だ。しかし…… 「惨敗続きかぁ……」 「クゥ、そんな調子で今度の選考会大丈夫なのカ?」  クゥ、というのは緑の髪を短めにしており、褐色のサングラスを頭にかけている俺のことだ。正確にはクゥ・シンクリアという名前だ。  で、この心配しているのか哀れんでいるのかがわからない顔をしている青年がカルマルクだ。細めの目と黒髪、そしてこのスーツ姿を特徴としている。 「な、なんとかなるんじゃね?」 「目がかなり泳いでいるゾ」  しかし、このデッキでどこまで行けるのか、正直不安だ……。だからと言ってデッキを変えるつもりはさらさらないのだが。 「ならカルマ、お前が俺にわざと負ければ――」 「本気で言ってるなら……絶交だからナ」 「冗談に決まってんだろ。さて、どうするか……」  宛もないまま、解決法を模索するのであった。  
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