安らぎ

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安らぎ

私は行く宛もなくただただ摩天楼のように続く階段を上っていた。 「(何階まであるんだろう)」 私は保健室・教室・職員室以外の部屋などにはほとんど行ってない。 そして、たどり着いたのが屋上だった。 「こんな所、あったんだ。」 私は鉄で出来た扉を開けた。 そこには今まで見たことのない、景色が広がっていた。 「綺麗。」 そこは、この学校で一番空に近い場所だと思った。 私は地面に仰向けになってみた。風が気持ち良くて、とっても落ち着いた。 「自由って、こんな感じ?」 「ハハ。これは自由じゃないよ。」 「えっ!誰?」 何処からか、聞き覚えのある声が聞こえた。 「こっちだよ。」 声のする方を見ると、そこに居たのは後藤さんだった。 「後藤さん、何故ここに?」 「後藤さんってやめて。彩でいいから。」 「…うん……」 「さっき、自由って言ったよね。」 「うん。」 「これは、現実から逃げてるだけ。」 「……………」 「また教室に戻れば疲れる現実に引き戻される。」 「…………………」 「まぁさ、あんたが教室へ来ないのは逃げてるんだと思ってるから。」 「逃げ…て……ない」 「自分がどう思おうがどうでもいいけどね。」 そう言って彩は去っていった。 「現実……」 彩が言った事は間違ってないけど、自分には逃げる事が精一杯なんだ。 と、ずっと心の中で思っていた。
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