4人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば、今日は別々な。つか今日から一週間ずっと」
自分の部屋にある等身大鏡の前で、紺地に赤チェック柄のスカートと同じ素材のリボンを第二ボタンまで開けたYシャツの上につけていると、扉越しに兄が声をかけてきた。
「……どうして?」
ドクンと響く心音が聞こえ、結び終えたリボンに触れたまま手を止めると、扉の向こうにいるであろう兄に視線を向ける。
「今日から一週間登校指導あっから、コバセンとかが校門の前に立ってんだよ」
ため息でも吐いていそうな口調の兄。私は「ああ」と理解しホッと胸を撫で下ろす。
止めていた手を動かし、ハンガーにかけていた桜色のカーディガンと胸ポケットの部位に校章が刺繍されているブレザーをとる。
「そういえば、先週ヤマセンが言ってた気がする」
袖を通し終えると、櫛で髪を溶かしペンシルで眉毛だけ描く。
薄いブラウンのマフラーを巻いて、ベッドの上に置いておいた赤いお守りのついたスクールバッグを取って、部屋を出た。
ああ寒い。部屋で暖房をつけていた分、余計に廊下の寒さが辛い。
「まあ、適当な時間に行くから」
扉の前にいた兄が後頭部をかきながらぶっきらぼうに言う。
少しだけ寂しい気持ちもあったけれど、兄のその表情から申し訳なさが伝わってきたから、私は「うん、分かった」と笑って頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!