大切

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 水島高校は、マンションの自動扉を出て目の前にある並木道を、右に向かって約五分くらい歩いていくと左側に見えてくる本屋とコンビニの間の、横道を抜けたところにある。 「美桜おはよう!」 「おはよ!」 「おはよー」  並木道を歩いていると、次々とかかる自転車登校の友人たちからの声は毎朝恒例。 「あれ、今日はお兄さんいないのー?」 「今日登校指導あるから後で来るってー!!」  たった今私の横を抜かしていったクラスメートの女の子三人組の集団に叫び返すと、「げっ、やば、忘れてた!!」と慌てて三人は自転車を止めて、内側に折って短くしていたスカートを直して長くしていた。  その光景に思わず笑みを浮かべながら、私はコンビニと本屋の間の横道を通る。   この横道を抜けると着くのは正門の前。  自転車置き場は本屋の先の角を曲がったところにある裏門側まで回った方が早いから、自転車組はこの横道を使わない。   「スカートを直せ」 「あなた何年何組?」 「しっかりボタンを止めてネクタイはあげなさい」 「「おはようございまーす」」  正門まで出ると、そこではコバセンと他体育教師数名が校則違反生徒をチェックしていて、生徒会の生徒が挨拶運動をしていた。 「安藤」  違反生徒が捕まっている横を何食わぬ顔で通り抜けようとしていたが、コバセンに呼び止められた。  まあ捕まるかな、って思っていたから驚かなかったけど、周囲から集まる視線はやっぱり痛い。 「第一まで閉めろ、リボンはもう少しあげろ、スカート直せ、あと指定外色のカーディガンは着るな、あと」 「あー、はいはいはい。ボタン閉めましたリボンあげましたスカート直しましたカーディガン脱ぎましたー」  特に反論するわけでもなく順番に直していく私にコバセンの横に立つヤマセンは「最初からそれで来いよ」と呆れていた。 「ったく、お前らは兄妹そろって……どうせ蓮の方は遅刻だろう」 「流石ヤマセン、担任だけあってお兄ちゃんのこと分かってらっしゃる」 「山崎先生と呼べ。お前は明日も同じ格好で来たら俺と小林先生でみっちり指導だからな」 「うげえ」
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