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私が我に還った頃には彼の腕の中に居た………
抱き締められていた―――
手を引き、肩に触れて…抱き寄せて……
気付けば彼の腕の中に居たんだ。
初めて、こんなに誰かの近くに居る……
触れてわかる
手の大きさ、広い肩、私を包む様にしている腕も…
彼の体温……
ユックリと落ち着いた鼓動の音
……………
全てを温かく感じた。
初めて人の体温を感じた。
どうして…
さっきと違う……
心がガードを張らない…
あれ程信じない、受け入れないって思ってたのに…
心が揺らいでる………
……初めてだから?
簡単に私の中に、何かが流れ込んでくる――――
すごく安心して…
包まれる様な………
此れは何というの―――……。
………何も言わずに抱き締められていた……
何を言おうと考えた理由でもないけれど…
只包まれて居たんだ……
空気が冷たい…
雨だからか室内でも温度は低くて…だからか余計に温かく感じていた………。
彼が少し力を強めた…
少しだけ強く抱き締められた…
…………………。
「……………」
何も言えなかった……
「………………っ…!?」
次の瞬間、身体が驚いた。
唇が耳に触れて…びくっと驚いてしまう。
驚いた次いでに我に還り、彼から離れようと押し退けた。
「…………っ…」
うつ向いた真間離れた。
「……………悪…い…」
彼が少し動揺しながら言う。
…………………。
……………
…………………うん、
………解ってる…
こんな近くに居たんだ、
少し動いて触れたって可笑しくはない……
……彼が判っていて、意図的ではないのなら…
……………あ、れ?
……何で私
理解しようとして…?
…どうして……
……………ぴくっ…
考えていたら、彼が顔に触れてきた。
……目元を触られる。
「……っ…何…」
彼の手を否定しながら言った。
「…何って……泣いてる」
「……え…」
彼の口から其の言葉を聞いて、耳を疑った。
泣いてる―――――?
自分の頬に手をあてて驚く。
……今まで泣いた事なんてなかったんだ…
なのに
どうして…
信じられない自分を知って
未だ
信じられなかった。
涙って、
此れがそうだと初めて知った。
初めて、
涙を流した―――――
初めて知った。
抱き締められること、
涙を流すこと、
どうか再びうまれない様に祈る。
彼を想わない様に―――――…
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