始まりは一人の爆弾魔から

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ある休日のこと。 零達は長介の家、永灰寺に集まっていた。 「なー。これでさ-、職員室をドカーンと・・・」 錬が時限花火を片手に怖ろしい話を繰り広げている。音だけなので安全だ、と本人が言っているが、なんだか怪しいものである。 「いやいやいや。危ないから。やめとこう」 零はこういう時にはしゃがない。誰かに危害を与える事は極力避ける、というルールを自分の中に作っているようだ。 「お前、俺が花火屋の息子だったって知らないだろ?俺にはこういうの楽勝なの」 「え!?じゃあやるか!!」 保障らしき物があればすぐにルール変更、というのが悲しいところだが。 「どうでもいいけどさー、それうちで爆発させんなよ?今日は葬式やるらしいから」 長介が二人に水を注す。 「へー。葬式なんてやるの?ここ」 「いや・・・ここ寺だから・・・」 「ふーん」 怖ろしき常識の無さ。 「誰が死んだの?」 「えーっと、浅木さんだったかな」 「マジで!?」 声を上げたのは零と良子だった。 「浅木さん・・・」 「柿泥棒やった度に殴られたわ・・・」 「リンゴも・・・梨も・・・鯉も・・・」 「じゃがい」 「お前ら泥棒しかしてないのか?」 卍があきれて訊く。 「いや、カミナリ注意の張り紙もやった」 「・・・もういいわ」 が、この後二人があまりにも静かになってしまったので、二人を元気付ける為(?)に葬式に参列することになった。 「まだ始まってないの?」 「おお。六時からだから」 「じゃあ通夜ですね」 「浅木のばあさん、いるかなぁ・・・」 二人の頭には最早「浅木さん」しかないようだ。
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