【花見酒ならず】

3/6
前へ
/74ページ
次へ
「喜々ちゃんの格好で言っても、何か変。」 そう、酒を大量に飲み、肉を食らっているが、紅若の本来の姿はそこにはない。 可憐な少女、卯花喜々の姿である。 憑依して飲み食いしているのだ。 「細けえことは気にすんな。ほら、来いよ、りり。」 カウンターの向こうでは、王理が少し困った顔をしている。 閉店間際に入ってきたから、今は店内に客はいない。 しかし、一見すると、未成年に飲酒させているのだ。 飲食店としては、少々望ましくない。 さらに。 「うっし!気分良くなってきた!酒持って、花見酒と行こうぜ、りり!!」 酒瓶を手に、喜々の姿をした紅若が立ち上がった。 さすがにこれはまずいと、王理が小声で術を唱える。 「・・・・・・あぁ?てめえ、何しやがる。」 喜々の顔で、紅若が凄む。 王理は、店のドアに術をかけて、結界を作ったのだ。 彼は祓い屋としてはとんでもなくへっぽこだが、結界作りだけは非常に得意だ。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加