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「あの・・・お店・・・」
困惑したように、楪が声をかけてきた。
清められた水を王理のところに持ってきて料理に使ってもらおうとしたのだが、それを受け取った王理は店で調理するどころか満開の桜の下をどんどん歩いていく。
「なあなあ、あんた、聞こえてんの?せっかく 楪が持ってきたんだから、料理しろよ。」
楪に仕えている京も、むっとしている。
「大丈夫だよ。りりがすぐに持ってくるから。あの子、寄り道しなければ早いからね。ああ、ここなんていいねえ。桜が綺麗だ。」
ひときわ咲き誇る桜の木の下にシートを広げると、王理は二人をちょいちょいと手招きした。
わけがわからないまま、靴を脱いであがる二人。
そこへ、りりが戻ってきた。
「持ってきましたぁ、主様。」
寄り道さえしなければ、王理が与えた性質のため風のごとく早い。
寄り道さえしなければ・・・・・・
それが、普段のりりの困ったところだ。
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