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「うちのりりが迷惑をかけちゃったね、昴くん。」
名前を呼ばれ、昴がはっと顔を王理に向ける。
「何故私の名を。」
「そこに一緒にいるのは雪くんだね。矢島王理です、よろしく。一応、君とは敵になるんだけど、まあ、そこらへんはあんまり気にしないで。」
気にしないで、と言われても、はいそうですか、とは言えない。
樒の一門に籍を置く昴は、王理を前に緊張した。
だが、王理からはリラックスした雰囲気しか伝わってこない。
「りりが迷惑かけたお詫びに、何かご馳走するよ。店が近くだから。ほら、あそこ。」
王理が指さした先には、洋風の店が建っていた。
『バル・デ・シレンシオ』と店名の書かれた看板が飾ってある。
「主様は、料理の腕だけはいいのー。」
「りり・・・何かフォローしてるのか、それとも誉めてるの・・・?」
自分の式神に料理の腕「だけ」と言われ、がっくりくる王理に、どうやら敵対心はないらしかった。
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