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剣が、俺の体を貫いた。
凶器が抜き出る感覚、栓を無くした傷跡からは、とめどない深紅が溢れた。
襲い来る激しい痛みの中、ゆっくりと振り向いたその先、俺は、そこにいた愛しい弟を見て、心から安堵する。
あぁ、良かった。ケガが無くて。
声に出そうとしても、口から漏れ出すのは言葉ではなく、紛れもない俺の命。
自身を支えきれなくなった両脚は崩れ、俺はその場に倒れ込んだ。
ふと、思考回路が正常に戻る。
俺を殺した敵はどこだ。
このままでは弟が危ない。
最後の力を振り絞り、手元に落ちたはずの己の剣を掴もうと、かすかに腕を動かす。
指が冷たい感触のそれにふれた瞬間、重い金属音と共に、剣は俺の目の前を過ぎていった。
もうアイツはいないから、戦わなくてもいいよ、兄ちゃん
弟は俺の首に手をかけ、首に下げていたペンダントをゆっくり外した。
そして耳に入ってきたのは、先とは違う軽い金属音。
細い鎖が断ち切れ、残骸となった音。
目の前の地面に落ち、悲しげな音をたてた、弟のそれだ。
兄ちゃんが赤色で、俺が青色
それ以外に俺達に違いなんて無い
きっと、親もこれで俺達を見分けてたんだろうな
俺達の中で、はっきりと違う物と言えば性格ぐらい
でも、そんなもの偽って演じようと思えばどうにでもなる
兄ちゃんの性格は…俺が一番よく知ってるから
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