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雪だるま
窓から日光が差し込んできた。
家の中にある家具や床のカーペットに、光の筋が当たっていく。
暖炉の残り火が唯一の明かりとなっていた部屋の中は、差し込む光が多くなるにつれ、徐々に明るくなった。
その光は当然、イスに座り顔をしかめながら手紙とにらめっこしていたアリカの顔にも当たった。
アリカはその眩しさに目を細めた。
頭が重い。
さっきまでうとうととしていた自分に気づいた。
気合を入れなおそう。
アリカは固く握っていたペンを置いた。
自分の座っている木のイスを引く。
重く感じる腰をしぶしぶ持ち上げ、立ち上がり、大きく伸びをした。
腰から軽い音が漏れ、腰の柔軟性が少し良くなった気になる。
同時に大きな欠伸も出た。
瞳から涙がひとしずく、頬をつたって落ちる。
それが、先ほどまで書いていた手紙の上に乗った。
アリカは顔を赤めた。
大慌てで手紙に乗ったそれを、自分の服の袖で拭いた。
少し跡が残ったが、それは手紙の端だったので、また紙を替える必要はなさそうだ。
よかった。
アリカはホッと息をつく。
落ち着くと、次は取り乱した自分を思い出し、恥ずかしくなった。
ごまかすために、コホンっと一つ咳をする。
しかし頬の赤みは取れない。
もう、なんなのよ。
アリカは何かをふり払うように、頭をブンブンっと左右に振った。
金色の髪がそれにつられて、日光に当たりきらめきながらなびいた。
アリカの自慢の髪が、ボサボサに乱れる。
そんなことになった自分の髪を見て、つい直そうかと手をかけようとしたが、そんな時間が残って
いないのを思い出し、諦めた。
いつもなら、いの一番にボサボサになった髪の毛をくしで梳き直すのだが、今はもうどうでもいい。
そんな場合じゃないのよ。
アリカは壁にかかっている時計を見た。
あと4時間しかない。
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