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イスに座り直す。
必死で考えて、言葉を頭の中から捻り出す。
しかし文が進まない。
言葉にならない。
もう、これじゃいままでのと一緒じゃない。
手紙を丸め、テーブルの上に出来ている丸めた紙の山に向かって投げる。
投げた紙クズは弧を描き、弱弱しく山のてっぺんに乗った。
アリカは目の前に出来ていた紙屑の山の高さを見て、何度もしたはずのため息をついた。
私、何やっているんだろう。
テーブルの上に置いてあった魔法の杖を持って振り、再度真っ白の紙を出す。
これもいったい何回目なのかしら。
魔法の杖を手元に置き、ペンを握る。
強く持ちすぎでペンがきしむ。
アリカは気が付かない。
文章を頭の中で構築しながら、アリカは部屋内を見渡した。
ふと目が留まる。
木製の小タンスの横に立てかけている、剣と鎧が目に入ったのだ。
鎧の胸元についた、英雄の証であるバッジが、いくつも日光によって、瞬いていた。
それを見て、今までの規律正しい行いがモットーだった自分を思い出す。
上層部がだらけているのが気に入らなくて、新人で入ってすぐ歯を食いしばり、上にあがるためにはどんな辛いことでも耐えてきた自分。
上層部に入ると、ルールや規律を一から見直し、改善し、また、部下の見本となるように、部下に憧れられるように立ち振る舞い、戦地でも先陣を切って特攻をしかけたりしていた。
甘さなんていらない。
ただ前だけを見てきた。
軍のトップに立てればいい。
軍のトップになって、この上の位のものだけが裕福になるような、そんな法律を変える。
国のみんなが幸せになり、みんなで笑って暮らせるような法律を作るんだ。
だから軍のトップに立てれば、それでいい。
他の欲望を抱くとか愚の骨頂だ。
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