雪だるま

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 仲間も、家族も、友達も捨て、自分は隊だけのことを考えて行動してきた。  自分はそう言って、そう実行して、今まで生きてきた。  それが今はどうだ。  部下がはしゃぐのを許し、それどころかパーティーなんてものに、自分まで参加するという。  ずいぶん甘ったれたものだ。  何をしているんだ、私は。  アリカはイスから立ち上がり、鎧に近づく。  そしてバッジに手を添える。  自分の誇りが、バッジから手を通り体へ戻ってきた気がした。  やはりやめだ。  パーティーなんぞというものになんか、私は行かない。  もう決めた。  あいつらもだ。  規律が乱れている。  今回だけは見逃してやるが、次こういう軟弱な行事に行くと言いだしたら、制裁を加えてやらんといかんな。  アリカはいつもの自分を取り戻すため、鎧をかぶろうと、鎧を手に取る。  少し重いが、自分の甘さを戒めるためだ、と持ち上げた。  そのとき。  ハラリっ、と何かが落ちた。  アリカは重い鎧をそっと元のところに戻し、それを手に取った。  そしてそれを見て、アリカはほほ笑んだ。  そこには自分の率いる軍内のチーム全員が、自分を中心に笑顔で肩を組む、絵が描いてあった。  魔法も能力も使われていない、人の手だけ描かれた下手くそな絵だ。  しかしその絵を見ると、なぜだかホッとした。  アリカは胸に何かポカポカと温かい物を感じる。  ……あいつらにも、息抜きは必要だな。  あいつらの規律の件に関しては、長い目で見ておいてやろう。  アリカは自分の考えを改めた。  だが、だ。  アリカは宙をにらむ。  私は行かないぞ。  私の決心は固いんだ。  自分の首を縦に振り、何度も頷く。  そう決めている。  そう自分で決めているんだ。
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