黒蜂

2/18
116人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
部屋では俺、星、灯の三人が昼飯を食べていた。 二人が缶詰を食べ、もう1人は違うものを食べている。 灯はベーシックに鯖の缶詰を美味しそうにスプーンで抉って口に運び、星は好物の鹿肉の缶詰が消えたのが少しこたえているのか、しょんぼりと箸で鯨の缶詰をつついていた。 そんな二人に対して、俺だけは別のものを食べ……、いや飲んでいる。 今、俺の手に握られているのは、飲むと胃の中でゼリー状になって膨らむという栄養食だ。 先程、男に殴られたとき口の中を切ってしまい、塩分の高いものを食べると傷に染みてしまう。 この栄養食、発売された当初はダイエットに効果的と女性に人気だった品だった。 たまにお袋が飲んでいるのを見たことがあったが、まさか自分も飲む事になろうとは。 俺が二人と一緒に味気のない液体を飲んでいると、少しの間、黙々と昼飯を食べていた灯が突然、星に聞く。 「あの……わたしまだ『大清掃』ってことについて聞いて無いんだけど…大事なことなんだよね?」 それまでしょんぼりと缶詰をつついていた星はその言葉を聞いてハッとした感じで応答する。 「……そういえばまだ話の途中だったね」 そこまで言って少し考えたあと、 「……宇宙、お願い」 なんと俺に丸投げした。 そして自分はまた食事に戻る。 缶詰が無くなったことが少しじゃなくて結構こたえているらしい。 こういうことは星の方が得意なのだがしょうがない。 缶詰を武器に使って無くしたのは俺だ。 それに元々スーパーでは俺が教えるつもりだった。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!