黒蜂

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「いやぁ、大変だったな」 「宇宙は2地区だけだったよね。僕は9号を連れて3地区回ったけど。……帰った時に気持ちよさそうに寝てた君には軽く殺意が芽生えたよ?」 そう言いながらジトっとした目でこちらを見てくる星。 その目に居心地の悪さを感じながら、ささやかな反撃を試みる俺 。 「ジャンケンで決めたんだから仕方ないだろ。それに、俺は代わりに食料調達行ったじゃんか。お前だったら9号に先行かせて人がいるかどうか確認できるクセに」 「9号の電池が切れちゃったんだから仕方無いでしょ。僕の服を貸してあげたんだから良いよね」 確かに、この服は星に借りたものだ。 俺は、この色はあまり持っていない。 「この黒い服か?こんなのでどれだけカモフラージュできるか知れたもんじゃねぇよ」 実は、路地裏で結構頼りにしていたことは言わない。 「とか言いながら実は路地裏の辺りで結構頼りにしてたんじゃないの?」 「……!?」 何故、そこまで細かく分かるんだろうか。 「ふ……。君の顔を見れば、考えなんてお見通しさ」 「……!!??」 またも、的確な発言。 「……お、お前、人の心まで読めたっけ?」 頭が良過ぎて遂に人間を捨ててしまったのだろうか。 そんな失礼な事を考えていると、星がキョトンとした顔になる。 「あれ?図星なのかい?」 「へ……?」 「カマかけたんだけど、意外と当たるものだね」 「な……!?テ、テメェ、この野郎!」 完璧に嵌められていた事に気付き、俺は星に組み掛かる。 ヘッドロックを掛けた所で、腕をバシバシと叩きながら、星が悲鳴を上げた。 「ちょっ……!宇宙!痛いから離して!眼鏡落ちたし!」 そんなことをしていると横から声が聞こえた。 「ふふっ……」 声の聞こえた方を見つめると灯が楽しそうな表情で微笑んでいる。 「……どうした?」 「えっ……?」 俺が疑問に思って聞くと、灯が数回目を瞬き、そこでやっと自分が笑っていた事に気付いたのか、慌てて謝り出した。 「あっ……ご、ごめんなさい。しばらく人と喋って無かったから。なんだか楽しくなっちゃって……つい」 「……そっか」 そこに少し悲しそうな色を見つけてしまって、無意識に俺の返答は少し消沈した物になった。
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