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1ヶ月間、人と全く話さないというのはどんな感じなんだろうか。
灯を見て、ふとその疑問が頭をよぎった。
人間が突然消えたときも俺と星は一緒にいた。
二人共、学校に早めに来てしまっていて暇だったのでたわいもないことを喋っていた。
それはいつもの事だったのだが、いつも通りの日常は、それを最後に唐突に終わった。
突然、教室にいた俺達以外のクラスメイトが跡形もなく消えのだ。
着ていた衣服のみを残して。
それから、俺達は二人で助け合って今まで生きてきた。
だから、親や友達が突然消えて悲しくて泣きもしたが、寂しくはなかった。
だが、灯はあの日からずっと独りだった。一体どんな気持ちだったのだろう。
「宇宙くん?」
そんな思考に浸っていた俺が、その声でハッと我に帰ると灯が俺の顔を覗きこんでいた。
「どうしたの?」
俺の表情に何か思ったのか、灯が問い掛ける。
俺は少し沈黙したあと、返事をした。
「いや……なんでもない」
「……そう?」
「ああ」
俺は頷く。
すると、横から声が聞こえた。
「灯ちゃん、ありがとう。おかげで助かったよ」
「へっ……?」
俺がそちらを見ると、いつの間にかヘッドロックから脱出した星が落ちた眼鏡を掛け直しながら、座っている。
「えっ、お前いつの間に……!?」
俺は空になった自分の腕の中と星を見比べつつ、困惑する。
「爪が甘いんだよ。君は」
眼鏡をいじりながら俺の事を鼻で笑うという、少しイラっとする行為をし、星は灯の方を向いた。
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