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先程の会話から十数分後、俺達三人は路地裏にいた。
しかし、先程のような緊張は俺にはない。
俺は着ていた黒い服を星に返し、ジーンズに白いTシャツ、その上に赤いダウンベストという装いに着替えている。
緊張していない理由は俺達の上空を飛行している物体にある。
それは大きさ5センチ程でフォルムは見るからにスズメバチだが、その表面に黄色はなく、全身が漆黒に染まっている。
9号だ。
「……よし、周辺に人はいないね」
そう言う星はその蜂を操作している張本人なのだが、その手に従来のコントローラーはない。
代わりに黒い革手袋を着けた右手を人差し指の先と親指の先をくっつけた状態で上下左右に振っている。
星が使っているのは
Conduct Remote Controller、
略して『CReC』(クレック)と星が呼ぶ物だ。
直訳すると指揮遠隔操作装置。
その名の通りまるで演奏の指揮者のように操作することからその名前が付いたらしい。
操作方法は簡単で右手に装着した黒い革手袋、星が『タクト』と呼ぶそれは人差し指と親指の先がスイッチになっていて、それらをくっつけて決まったモーションで振ると、9号が対応した動きをする。
指を離している間は『タクト』を振っても9号は反応しない。
原理としては、星のTシャツの胸部分に安全ピンで留まっている複数のボタンが付いたバッジがセンサーで、手袋の振られる速度や軌道を読み込み、モーションに対応した命令を9号に送る。
といったものだと前に星が説明してくれた。
とにかく、人差し指と親指をくっつけて、手袋を着けた手を振れば、9号が操作出来るのだ。
30年程前に発売されたリモコンで操作するタイプの据え置き型ゲーム機を参考にして作ったらしい。
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