いっちば~ん

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布団から出ることなく、黒のタートルネックの上からクリーム色のコートを羽織り、色の濃いジーンズを履いた黒宮は、少しゴロゴロと布団を抱いたまま床を転がり、やがてむくりと起き上がった。 この男はこれから仕事の筈だが、布団の中で着替えたせいでコートはシワだらけになり、ジーンズには謎の紫の毛糸が巻きついている。 流石に毛糸は払うのかと思いきや ガチャッ…… スタスタスタ…… 行ってしまった。 まあ黒宮からすればいつものことなのだが、少しは気にしろよという声が聞こえてもおかしくないだろう。 事実黒宮は、ごくごく稀にではあるが 浮浪者に間違われる。 「ふぁ……」 基本的に口を開くのも面倒な黒宮 必然的に独り言など一切言わず 書く側としては非常に使いにくいキャry「いっきし!!」 ………… まるで志村のようなくしゃみだ。 そうこうしているうちに大きなビルの目の前に立つ。 「はあ……ねむ……」 良い子のみんなは会社の前で溜め息をつくのはやめよう。 運が悪ければ上司と鉢合う。 黒宮の背後に立つのは、スーツを着、腰まで真っ直ぐに伸びた金髪をした気の強そうな女性 「会社の前で溜め息つくとはいい度胸だな、黒宮」 「げっ、隊長……」 黒宮がいい例である。 この後は確実に面倒なことが起きるだろう。 これこそが予感より確実で、運命より具体的な 所謂テンプレである。 「かったりいなあ……」
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