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帰路にて
「ん?」
ブーツのような足音を聞いたので振り返る
が、後ろには誰もいない。
「……」
いや、誰もいないというのは少々不適切か……
そこには、誰も見えない。
ここは約二十メートルに渡り車がやっと通れる程度の狭い路地が広がっている。
この状況を考えた瞬間、俺の頭には一つの名前が上がっていたが、あえて名は呼ばずに声をかける。
「ファントム系かステルス系か……まあどっちゃにせよ俺には意味ねえぞ~」
そう言った途端……とまではいかないが声をかけて少しすると宙に女性の顔が浮かび上がった。
「……いつ気付いた」
「上司のお使いって辛いねえ」
質問は無視、何故なら次に生かされるから。
踵を返し、歩き出す。
目指すは我が家、さあ急げ。
「おい」
これも無視、何故なら向こうは怒っているから。
あ、やべ、足音消して走って来てますやん。
ブォン
「うおっ!! 危ねえだろ馬鹿野郎!!」
咄嗟にしゃがむことで空を切る、刃渡り十センチ程のナイフ。
「ちっ……」
信じられない程残念そうな顔。
「ミリア……セルメンバーにガンナイフ向けんじゃねえよ……」
ガンナイフ
鍔にリボルバー式の発射口を持つ特殊なナイフの事で、軽く慌てる程の速度で刃が劣化する。
使い慣れることが前提とはなるが、不意打ちにはかなり適したナイフで、似たような武器にスペツナズナイフ(柄に仕込んだバネで刀身を飛ばすナイフ)などがある。
「フン……まあいい、次は仕留める」
「仕留めるな」
ちなみにこの女、名をミリア・セクセスタといい、俺のセルメンバー(チームメイトのようなもの)だ。
が、今のように、何かにつけて俺を狙ってくる。
これで確か……
「……三十七回目か?」
「まだ三十六回目だ阿呆!! 見ていろ、私は必ず五十回以内にお前を討つ!!」
俺も嫌われたものだよ。
会話も面倒になったので妥協して話を聞いてみる。
「はいはい……んで何? 仕事なら早くしてね」
「いや、お前の上司からのお達しでな。お前が少々気が抜けているようなので……殺せとのことだ」
絶対話盛ったぞこいつ。
全く……こいつに絡まれると碌なことないな。
「死ぬのはヤダね……別にやり残したこととかは無いけど」
∽黒宮side end∽
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