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6月の空はひたすらにどんよりとしていた。
連日降り続いている雨の所為で、街全体の雰囲気も落ち込んでいるように感じる。
雨に濡れた街路樹に、機械的な時計の音、反射して映る自分の顔……。
流石弟者は頬杖をついて窓を眺めていた。
6月の第三日曜日、なんてことのない休日だ。
テレビをつけた。
リポーターが話している。
VIPは今日も雨が降っています。
お出掛けの際は傘を忘れずに――。
(´<_` ) 「もしもし」
テレビを消し、携帯を開いた。
『よ、弟者』
単調な呼び出し音は止まり、代わりに耳へ入ったのはしばらくぶりに聞く兄――流石兄者の声だった。
(´<_` ) 「…用件は?」
『んだよ冷めてんな。とりあえず今日は空いてるか?』
兄者は質問に答えず、質問で返してきた。
相変わらず一方的だ。
(´<_` ) 「部活は無いが」
『よし、じゃあちょっと来い。人手が足りん。…つっても俺一人しかいないが』
(´<_` ) 「ああ?何の話を」
『引っ越しだよ引っ越し。色々あって、寮から教授のとこへ行くことになってな』
(´<_` ) 「そんなの自分でやれ」
『そっけねー。兄のお願いだぞ?…な、今度また本を買ってやるからさぁ』
だんだんと声が小さくなる。
わざわざ電話を寄越すぐらいだ、本当に困っているのだろう。
少々面倒ではあるが、断るほどの理由も特に思い浮かばない。
(´<_` ) 「…ったく、約束だからな」
『!!流石だな弟者、ありがとう。じゃあ今すぐにでもこっちへ来てくれ。今は寮にいるから』
(´<_` ) 「はいはい」
ぱたりと携帯を閉じる。
本でも読んで一日を潰そうと思っていたのだが、仕方ない。
適当に服をひっぱり出し、椅子にかけてあった上着を羽織った。
(´<_` ) 「いきますか」
ドアを開けると冷たい風が吹き込んだ。
家の中では聞こえなかった雨音が耳に入る。
弟者は傘を手に歩き出した。
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