第一話

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「スズオキ……スズオキねえ。なあ、あんたまさか春先あたりで話題になった異世界人かい?」 「俺の事を知っているんですか?」 「やっぱりそうか! ああ知っているとも。ヘンテコな名前だったから、よーく覚えているよ」  破顔した男は野太い笑い声を上げ、大きなその手でがしがしとリントの頭を乱暴に撫でてきた。  日々の農作業で硬くなった掌が、栗色の頭髪を掻き乱す。  頭を鷲掴みにされた彼は、嫌そうに眉を寄せて、 「お、俺の事はともかく〝豊穣の祭〟は……?」 「あん? 見て分かるだろ、今日の分はもう終いさ」  大きく頷く男性の手から逃れたリントは、続けて訊く。 「だったら〝祭〟に使われた〝正典〟は……!?」 「お披露目はまた明日だろうなあ。今は町長の家に保管されているはずだがね」
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