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「スズオキ……スズオキねえ。なあ、あんたまさか春先あたりで話題になった異世界人かい?」
「俺の事を知っているんですか?」
「やっぱりそうか! ああ知っているとも。ヘンテコな名前だったから、よーく覚えているよ」
破顔した男は野太い笑い声を上げ、大きなその手でがしがしとリントの頭を乱暴に撫でてきた。
日々の農作業で硬くなった掌が、栗色の頭髪を掻き乱す。
頭を鷲掴みにされた彼は、嫌そうに眉を寄せて、
「お、俺の事はともかく〝豊穣の祭〟は……?」
「あん? 見て分かるだろ、今日の分はもう終いさ」
大きく頷く男性の手から逃れたリントは、続けて訊く。
「だったら〝祭〟に使われた〝正典〟は……!?」
「お披露目はまた明日だろうなあ。今は町長の家に保管されているはずだがね」
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