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幸いお皿の上には落ちなかったけれど、ゴトッと嫌な音を立てて床に落下した。 「まぁ、だらしない。そんなみてくれで私を出し抜こうと?分を弁えなさい。この方に貴女は似合わなくってよ」 たった今、彼にワインを浴びせかけた癖に言いたい放題な女性に腹が立った。 (なんなの一体。アタシは関係ないわよ) 脇に控えて居たウェイターが目尻に写る。彼は仕事をしたいようだが、近寄りがたい雰囲気に戸惑っているようだ。アタシは手を上げて女性に対抗する事にした。 「それは申し訳ありませんでした。でも、貴女のしたことはどうなんでしょうか?彼に詫びたら如何ですか。…みっともない」 アタシの言葉を聞いて、女性はまた真っ赤な顔をした。その手は震える様にワナワナとして、持っていたグラスをアタシに向けて投げつけようと振り上げた。
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