そんなのってないよ

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 ひどい。そんなのってひどすぎる。  そりゃあ奈津の言うとおり、クラスでも地味で目立たないあたしとは違って早矢は人気者。いや、人気者ってレベルじゃない。もはや皆の王子といってもいいくらい。バスケ部所属の賜物、女子にあるまじき百七十七センチの長身にウルフカットが良く似合う。まさに男子顔負けのイケメン。そうは言ってもここは女子校だからあたしはイケメン男子の実物を知らない。でもきっと早矢はヘタな男子よりきっとずっとカッコいいはずだ。うん、そう。そこらで見かける男子よりホント素敵だもの。  クラスではいつも賑やかな取り巻きに囲まれて、あたしと接点はない。交わした言葉もクラスが一緒になったこの一年間でたったの二言三言。会話の内容なんて緊張してて既に忘却の彼方。早矢にとってあたしはきっと印象の薄過ぎるただのクラスメイトのひとりにすぎない。そんなことは前々からわかってたけど、今回でさらに思い知らされた感じがする。しょうがないけど、でもひどい。やり場のない怒りをいったいどうしたらいいんだろう?  そうだよ、あたしは早矢に一目ボレだった。クラスが一緒になって初めてその姿を見たときから。
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