そんなのってないよ

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「あーあ。早矢がいなくなると学校に来る楽しみがひとつ減るなあ。あのボーイッシュ王子拝むだけでもこの不毛な女子校ライフの慰めになってたのに」  奈津はそういって早矢に視線を向ける。当の本人は、決定的事実を知らされた他のクラスメイトにとり囲まれて大変なことになっている。できることなら自分もあそこに混ざりたい。でもその勇気がない。そんな羨望と嫉妬とあきらめがぐちゃぐちゃに混ざったこの気持ち。単なる嫉妬とわかっていても、見ていてなんだかとっても嫌だった。奈津や他のクラスメイトたちの、早矢に対するその軽いノリが。  あたしは違う。早矢が好き。本当に大好き。早矢が意外と抜けているところとか、取り巻きから離れてほっとした表情とか、試合でうまくいかなくてひとり教室で泣いていたところとか。そんな誰も知らない早矢の顔。奈津をはじめ他の娘たちみたいに一時的な鑑賞用もしくは愛玩的なノリで好きなわけじゃない。あたしはずっと好きだった。同じクラスになったその時から。許されるものならば早矢の彼女になりたい、いや、逆に彼女にしたいくらいに早矢が好き。
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