一章

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ーーネメアの谷ーー 「おい見ろよ。命知らずな輩が俺たちの縄張りに入ってきたぞ」 「女もいる」 「本当だ」 「教えてやろうじゃないか」 「頭!!」 頭と呼ばれたひときわ大きな男が太い太刀を右手に表れた。 「俺たちの縄張りに入ってきたらどうなるかを」 頭が太刀を抜くのを合図に、他の男たちも一斉に刀を抜いた。 「よォ旅人さん、こんなとこまでご苦労なこった」 頭とカイン達を含めた四人を中心に、刀を抜いた男達が取り囲んだ。 逃げ場は、ない。 「あちゃー。本物の少女だったって訳か」 「まさか本当にいるとは…」 「俺、後で探してくるわ」 「フラれてたのはどこの誰だ」 「うるさいぞ空木」 「…オイ…さっきからゴチャゴチャうるせぇぞ。今の状況分かってんのか?」 しびれを切らしたのか、頭は太刀を握る手に力を込め、カインに矛先を向けた。 「どうするんですか?カイン」 「どうするって…俺らはこれが目的で来たんだろーが」 カインもさっと刀を抜き、頭に刃を向けた。 「俺らは獅子宮から来た者だ。無駄な怪我を負いたくなければ大人しくするんだな」 「獅子宮…?」 「頭、間違いないです。あの刀、王族の紋章がついてます」 「そうか…」 頭はこれはいいことを聞いたと言わんばかりにニタリと妖しげに笑い、こう言った。 「お前を売ったら、さぞ高い値が付くんだろうなァ…」 そして目にも止まらぬ早さでカインに近付き、太刀を大きく振りかぶった。 振りかざされた太刀は、太陽の光に反射し、ギラリと光を放っていた。
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