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「どこに向かえばいいのだろうか」
そこは閑散とした廊下。ひやりと冷たい空気は、人が居ないことを強調していた。前を見据えれば廊下に無数の扉が点在しているが、扉にかかれた文字からここが三学年の校舎であることが伺える。一学年の彼が訪れる場所ではない。
「これこれ。ここで何をやっておるのだ?」
廊下に一人立つ新入生を見て不審に思ったのか、無数に点在する扉の一つから白髪の老人が現れた。腰を曲げて、杖を突く老人は人の良さそうな笑みでフォフォフォフォと笑っている。その老人に、少年は溜息をついた。
「じいさんよ……。人生とは旅のようだとよく言われる。出発点があり、目的地がある。予め定まっている二つの点だな。しかしながら、その過程までは定まっていないのだ。点と点を結ぶ線。それこそが人それぞれであり、人生の違いとも言える。では、こう言えよう。どんなに遠回りをしても、いつか目的地に辿り着けるのだ」
「つまり?」
「遠回りだって個性だろう。なら迷子だって個性だ」
長々とした口上だったが、要するに迷子らしい。しかしそれは悪くない。つまり俺は悪くない、と主張しているようだ。
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