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「いっくん、ご飯できたよ!」
「今日は、親子丼かあ…。」
「前に、美味しいって言ってくれたから、また作ってみたの。」
「じゃあ…いただきます。」
「いただきます!」
食事中、2人は会話をほとんどしない。
テレビを観ながら、黙々と食べ進める。
前の様な、明るい食事ではない。
「…。」
「…。」
「心春ちゃん、料理どんどん上手くなるね。」
「毎日、料理してるおかげかな?」
「いいお嫁さんになるよ。」
「…うん…。」
いいお嫁さんになれるなんて、今の私にはどうでもよかった。
私のなりたいお嫁さんは、いっくんのお嫁さんになる事…でも、それが叶わぬ夢なら、私にとっていいお嫁さんだと言う言葉は、褒め言葉でもなんでもない…。
それ以上、2人の間に会話はない。
お互いに、どうすればいいのかわからない。
冷たく、長い時間が過ぎているように感じてしまっていた。
「ごちそうさま。心春ちゃん、先にお風呂行っていいよ?食器は俺がやっとく。」
「でも…。」
「毎日、俺の三食分用意してくれてるから…それのお礼だから。疲れてるでしょ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて…。」
逸樹は、心春が風呂場へ行くのを確認すると、1つため息をついて、無心で後片付けをする。
こうやって、何かをしていないと、不安や悲しさに押しつぶされそうになる。
空気みたいなお互いの距離は感じる。
でも、一向に恋人だけを思い出せない…もう、正直限界がきているのか、心と身体のバランスは保っていられない。
悲しみや不安とかなんて感情、いっそ捨てられたらいいのに…。
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