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何もする事がなく、ただ時間が過ぎる。
そんな中、心春は観ていたテレビを消して、音楽をかけながらアルバムを3冊程リビングへ運び、1冊ずつゆっくりと見始める。
そこには、心春と逸樹や仲間たちと撮った写真があり、懐かしそうに眺める。
「懐かしいなあ…こんな写真撮ったかなあ?…あっ、体育祭の写真。一年の時は負けて悔しかったな。」
高校の時に、2人が思い出にと撮った桜の写真と、その時に拾った花びらが、何枚か挟まっていた。
「この木、あの桜…。」
心春は、その写真を見ると涙が出た。
「もう、本当に思い出になっちゃうんだ…いっくんは覚えのない、私だけの思い出に…。」
そう、いっくんは私と私との思い出を、全く思い出していない。
ココちゃんと呼ぶ声は、出会った時のように、心春ちゃんのままで、私の時間は、彼が記憶のないまま進み、彼の時間は記憶がなくて、それを受け止めて進む。
でも、2人で歩むはずだった時計の針は、あの事故の日から止まったまま、壊れて動かなくなってしまった…。
「本当に、いっくんとお別れしなくちゃならないんだね…。」
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