No.010

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逸樹が目を醒ますと、そこは病院のベッドの上だった。 横には、心春が寝ている姿があった。 「…。」 なんだか、不思議な感覚がある。 俺の手を握っているのは、愛しい人。 俺の、大事な恋人…。 「…ココちゃん、ココちゃん。」 「ん…いっくん?」 「ココちゃん、俺…一体?」 「…!!いっくん、今…私の事なんて?」 「えっ…ココ…ちゃん?…あっ!」 思い出した。 何もかも。 記憶をなくした前後の事も、俺がずっと忘れていて、大切なはずなのに思い出せない人…その人を、ココちゃんって呼んでいた事を…。 「思い…出したの…?」 「ココちゃん、俺…全部思い出したよ。君との思い出全てを。」 「いっくん!」 心春は、逸樹に抱きつき泣いた。 二度と、自分を思い出さないかもしれない愛おしい人へ、嬉しくて泣いた。 「ココちゃん、ごめん。俺…。」 「いいの!いっくん…。」 「ん?」 「お帰り!!」 「ただいま!」 やっと、この日がきた。 何年も、何十年も先になると思ってた。 でも、いっくんは思い出してくれた。 私との思い出も、私の事も。
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