イザベラ

2/4
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
 灼熱と冷気の二つの死神に支配された砂漠。そのオアシスにイザベラの都はある。椰子の生え具合から察するとオアシスは四里ほどの小規模なはずだが、この都の規模はその何十倍も大きい。 都市は何十里も穴を掘って水をくみ上げている井戸が何万基と備え付けられており、都市の発展は水脈の届くかぎり続いている。そのためにオアシスより大きな規模を保ちえている。よくよく注意してみるとオアシス周辺の砂は多分に炭酸カルシュウムを含んでいる。すべて花虫綱のかけらだ。 そこには牙をもった貝や、ヒレを持たず鼻腔から伸びた触角で移動する魚、魚の巣に托卵する鳥などの古代からいたありふれた生物の化石が転がっていて、ここがかつて湖だったことを偲ばせる。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!