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その時、携帯が鳴った。
「…あ、悠真だ」
あたしの携帯の画面に「針谷悠真」と出ている。
ヤバ。
「…もしもーし」
『どこにいんだよ!?お前ら!!帰ってきたら誰もいないって!』
「…え、えと、アップルティーを買いに行ってました」
『はぁ!?』
「廉が欲し…んご!」
あたしが言い終わる前に廉があたしの口を手で塞ぐ。
「なんか、ハルが金を持ってなかったから、二人で紅茶買いにいっただけ。じゃね」
廉が、あたしに顔を近づけて受話器でしゃべる。
…息、かかるし。
…緊張するんですけど…っ!
でも、そんな緊張しているのなんか一瞬で、あっというまに廉に携帯を取り上げられてブチッと電話をきられる。
…てか、廉の気分転換?のために出かけたこの買い物が、あたしのせいになったような気がするのは気のせい…じゃないよね!?
「ちょ…れん、ひど…」
苦情を言おうと思った。
なのに。
あたしが顔をあげて廉を見たとき、あたしの視界に入ってきたのはベッと舌をだして、悪戯な顔をした廉だった。
その顔を見ただけで胸がキュッと狭くなる。
息がほんの少し苦しくなる。
廉は、詐欺師だよ。絶対。
そんな顔はずるい。
「さっさと行くぞ」
廉はそっけなくそう言うとあたしの手を引いて、家までの道を歩く。
あたしの顔はきっと、真っ赤だったと思う。
なんでそんなに余裕なの。
――――廉
「あ、お前、明日も勉強な。」
「え」
唐突で、驚く。
「…当たり前だろ。今日、ほとんど勉強してないじゃん」
…最悪ですね、えぇ…。
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