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「ちわーっス!俺、俺、俺だよー♪廉くん溺愛の悠真くんだよーっ♪」
廉の家の玄関の前で俺が言うとガチャッとドアが開いた。
「…近所迷惑」
廉が綺麗な顔を覗かせた。
それはもう迷惑そうな顔で。
「えぇーっ!もうっ、廉くんの照れ屋ーっ!ツンデレさんめ☆」
ふざけた口調で言うと、廉はさらに顔をしかめる。
やりすぎ?w
「…今すぐ国に帰れ」
ガチャッとドアが閉められた。
やっべ!
「いやーっっ!!捨てないでーっ!廉くーんっ!!」
大声で怒鳴ったらあっという間にドアがあいて、拳骨がとんでくる。
…あら、本気で怒ってらっしゃるわ。
やめとくか。
俺はドアを閉められる前に、そのドアを掴む。
冗談顔をやめた俺に怪訝そうな顔を廉は向けた。
「…なに」
廉はそう言いながら真面目な顔になった。
ホントはこんな空気で話したくないんだよなぁ…。
俺、しんみり苦手。
「…とりあえず、おじゃまさせてもらうわ♪」
俺はそう言って靴を脱ぎ、廉の部屋に向かう。
いつもなら「不法侵入で訴えるぞ」って言われるけど、今日は言われない。
これに、いつのまにかできた、俺らの距離が表れている。
…もとに戻れるなんて思ってない。
けど、1歩は進みたい。
前みたいに笑いたい。
心から。
そのためにできた距離ならば、必ず違うかたちで埋まるはずだ。
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