嫉妬

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「お薬…なくなっちゃったんだけど、お兄ちゃん分かる?」 顔色のよくない状態で、ドアの前にフラフラと立っているのだから、兄としては心配になる。 それにウチは、親がほとんどいないから余計に。 「…ああ。確か棚にあった。持っていくから部屋で待ってろ」 そう言って立ち上がると悠真が無言で手をひらひら振ってくる。 "いってら~" って意味なんだろうな。 俺はそれをほぼ無視に近い状態で放置して戸棚に向かった。 でもそのあとを、なぜか美那都がついてくる。 「…美那都、寝てろ」 ポンッと美那都の頭に軽く手を置くと、美那都がその手をぎゅっと掴んだ。 「…お兄ちゃん、駄目だよ」 いきなり言われてびっくりする。 「ハルちゃん、悠ちゃんに盗られちゃ駄目。」 …聞いてたのか。 ふうっとため息がでた。 美那都はハルがお気に入りだから。 「…それはハルが選ぶことだろ?」 そう言って戸棚に向かおうとするとまた、服の袖を掴まれる。 「駄目。ハルちゃん、お兄ちゃんのこと大好きなんだから…」 その一言に足を止めた。 止めてしまう自分もなんか嫌だけど。 「だってハルちゃん、美那に会うといつも言うよ。あんないいお兄ちゃんは、この世界に一人もいないから、美那は、幸せものだねって…」
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