第1章

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「はぁ。何か心当たり無いのか?」 たまにはまともなお兄ちゃん。 朱鳥伊吹。 大学3年。 とりあえず一言で彼を語るなら、変態紳士。 本気じゃないのは明確なんだが、妹の私にまでも手を出してくる。 お姉ちゃんが居なくなった今、標的は私に絞られた。 大学では、そのルックス故にモテモテ。 しかし彼女なし。 その理由は、妹が好きだから、みたいなときめき近親相姦物語ではなく、女を好きになれないから。 そう。 お兄ちゃんは、同姓愛者。 所謂ホモ。 こんな事実は、私、真琴、お姉ちゃんしか知らない。 親は知らない。 うん、そんなこと言えないね。 「うーん…。心当たりって言われてもなぁ…」 妖怪に襲われたとか、そんな現実離れした出来事がもしあったら、覚えてるだろうに。 すると、真琴が。 「もしかして、昨夜の妖怪変化見たから?」 「へ」 妖怪変化とは、1年前くらいに流行った映画で、昨日テレビ放送していたの。 私は何となく見てたんだけど…。 「見てたけど…なんでそれで私に八重歯がはえるのよ。私が妖怪になったとでも!? そしたらお兄ちゃんだって、真琴だって、お母さんだって、私みたいになってるはずだよ!? しかもあの映画人気だから、たくさんの人が見てるはず!!」 「いや、人を妖怪化する映画…。 不可解だな。何かあるんじゃないか…?」 「だから厨ニ乙」 もうこれ以上厨ニ発言すると、ツッコミもしなくなっちゃうよ? 「あ。でもさ、あの映画って、主人公もヒロインも強い妖怪で、めちゃくちゃ格好良かったよな」 「あぁ…。特に仲間たちを裏切ってまで人間を守ったシーンは胸熱だったよね」 あれは格好良かったなぁ! 憧れたよ。 「ならさ、その憧れで、こいつらみたいになりたいって思って、それが叶っちゃったんじゃない?」 「うわわわわ。そそそんな馬鹿な。 私は別に格好いい妖怪になりたいなんて思っちゃいないよ…」 自分、動揺してるわー。 「でも、それが本当だとしたら、奏、意外とロマンチストなのねー」 お母さん、優しく言ってくれた。 2人だったら、厨ニ扱いするんだろう。 真琴に言われたらぶん殴るつもりだった。 「私はそんな……」
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