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「はぁ。何か心当たり無いのか?」
たまにはまともなお兄ちゃん。
朱鳥伊吹。
大学3年。
とりあえず一言で彼を語るなら、変態紳士。
本気じゃないのは明確なんだが、妹の私にまでも手を出してくる。
お姉ちゃんが居なくなった今、標的は私に絞られた。
大学では、そのルックス故にモテモテ。
しかし彼女なし。
その理由は、妹が好きだから、みたいなときめき近親相姦物語ではなく、女を好きになれないから。
そう。
お兄ちゃんは、同姓愛者。
所謂ホモ。
こんな事実は、私、真琴、お姉ちゃんしか知らない。
親は知らない。
うん、そんなこと言えないね。
「うーん…。心当たりって言われてもなぁ…」
妖怪に襲われたとか、そんな現実離れした出来事がもしあったら、覚えてるだろうに。
すると、真琴が。
「もしかして、昨夜の妖怪変化見たから?」
「へ」
妖怪変化とは、1年前くらいに流行った映画で、昨日テレビ放送していたの。
私は何となく見てたんだけど…。
「見てたけど…なんでそれで私に八重歯がはえるのよ。私が妖怪になったとでも!?
そしたらお兄ちゃんだって、真琴だって、お母さんだって、私みたいになってるはずだよ!?
しかもあの映画人気だから、たくさんの人が見てるはず!!」
「いや、人を妖怪化する映画…。
不可解だな。何かあるんじゃないか…?」
「だから厨ニ乙」
もうこれ以上厨ニ発言すると、ツッコミもしなくなっちゃうよ?
「あ。でもさ、あの映画って、主人公もヒロインも強い妖怪で、めちゃくちゃ格好良かったよな」
「あぁ…。特に仲間たちを裏切ってまで人間を守ったシーンは胸熱だったよね」
あれは格好良かったなぁ!
憧れたよ。
「ならさ、その憧れで、こいつらみたいになりたいって思って、それが叶っちゃったんじゃない?」
「うわわわわ。そそそんな馬鹿な。
私は別に格好いい妖怪になりたいなんて思っちゃいないよ…」
自分、動揺してるわー。
「でも、それが本当だとしたら、奏、意外とロマンチストなのねー」
お母さん、優しく言ってくれた。
2人だったら、厨ニ扱いするんだろう。
真琴に言われたらぶん殴るつもりだった。
「私はそんな……」
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