第1章

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と、そのとき。 ブーブー。 私の携帯が、震えた。 メールだ。 食事中に携帯を触るのは気が引けるけど、朝のメールって言うのは、結構大事な連絡だったりするから、私は携帯をいじる。 「2件…?」 2件メールが来ていたらしい。 最新、つまりついさっき来たのは、友達からの連絡。 大したことないから返信しないでいいや。 でも、もう一件は知らないアドレスだった。 @以下も見慣れないところ。 迷惑メール…? 「……は!?」 「どうした奏」 「Your wish was granted.」 「何言ってんの?」 「二重人格のもう1人、メアリーか!? 発音は良くないけど!」 「ううるさいっ!!それは昔の話でしょ!?」 黒歴史!! 「あぁ。確かそのメアリーちゃん、アメリカンなのに日本語喋ってたわよね」 「お母さんまでっ!!昔はもう終わったから忘れて!! 話が進まない!!」 今はそんな昔話に花を咲かせてる時間じゃない!! 「メールにそう書いてあったの!!」 「何て意味?」 「あなたの願いは叶いました、みたいな感じか?」 「うわー!!やっぱり姉ちゃん、妖怪に憧れてたんじゃないか!!」 「えええっ!?何この恥さらし!!」 高2にもなって、妖怪に憧れるなんて…。 「え?でも何?それで神様か何かが私を妖怪にしてくれたと?」 「でも、妖怪妖怪言ってるけど、ただ八重歯がはえただけでしょ?それ以外に何か変わってないと、妖怪化とは言えないんじゃないかしら」 「そうだよねー…」 「じゃあ、昨日のみたいに強くなってるかもよ? 試しに兄ちゃんをぶん殴ってみたら?」 「はぁっ!?何で俺!?」 「そうだね。じゃあ失礼」 殴った。 お兄ちゃんを殴った。 倒れこんだ。 今までお兄ちゃんとの喧嘩に勝ったことなかったのに、私が1発殴っただけで、お兄ちゃんは頭を抱えて倒れた。 「へ……」 「…………」 辺りは静まり返っている。 室内には、お兄ちゃんの奇声だけが寂しく流れる。 「どうやら本気で私は妖怪になってしまったらしいですね」 お兄ちゃんは、犠牲となったのだ。
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