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「5分、間に合ったかな」 そう言われても、いちいち秒数など計っていない。 ただそこまで長い待ち時間ではなかったはずだし、これでやっと遠くへ行けると思えば、決められた300秒も今はどうだってよかった。 だがサンタクロースは再び不思議なことを言い出した。 「君は、今すぐにでも家を出たい。でもやっぱり僕は黙って見過ごすことはしたくない。君にとっては余計なお節介だろうけどね。君は危険をかえりみないようだけど、安心できる場所があるのなら、そこに行きたいとは思わないかい?」 「……ここから出られれば、どこでもいいって言ったはず。5分待ったし、話を聞く約束はしてなかったから、もう行っていいでしょ」 「あぁ、そうだね。話は簡潔にしないとね。君を僕の家に連れて行きたいんだけど、どうかな」 悪い人に捕まって、ひどい目に遭うかも。さっきサンタクロース自身が言った台詞が脳内で繰り返される。 サンタクロースといえど、眼前に立って普通に話をしていれば、正直、“得体の知れない男の人”だ。 彼の生態や正体など知る由もない。 それが突然「家に来る?」と誘われても、好奇心さえ現れない。サンタさんのおうち!と無邪気にはしゃぐこともできなかった。 そもそもそんな風に気軽に誘えるということは、サンタクロースは時間を止められる特殊能力を持った、普段は正体を隠しながら生活をしている、街の住人なのか。 わたしは自分でもわかるくらい、あからさまに不審な目を向ける。心中を全て悟ったわけでもないだろうが、説明不足であることは気付いているらしいサンタクロースは苦笑した。
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